キクチ・ヒサシ

文化と芸術を言祝ぐ『コトバの塔』

コトバの塔 小説・物語

光のダンス

光る、光る、光る、と言うのよ。それで、わたしは驚いて、覗き込んでみたの。そうしたら、光る、というよりも、光そのものがそこに在るようだった。何て言ったらいいの、光るんじゃなくて、光が在るようにわたしには思えたの。自分でも何を言っているのか、光ると光の違いがいまひとつわからなくて、どちらでも同じことなのかしら。とにかく、わたしはそういう風に光を確認したの。それが、その頃のわたしにとって大きいことだったのよ!あなたは、いつも何を考えているのか、よくわからなくて、ふつう、その人が言う事や行動に何か一貫性とか性質とかそういうものが見えるものだと思うわ。どうかしら?よくわからないけど。とにかく、わたしには、あなたの言動の出所がつかめないのよ。あなたが何を考えているのか、何を求めているのか、さっぱりわからなくて、わかる必要はない、とかそういう意見もあるかもしれないけど、わたしが言いたいことは、あなたがわからない、という事がわたしに存在して、まるでモノを言わない山とか風とか土とか水とか、そういうのを相手にしているみたいだった。だから、あなたが何も言わないのは、きっと小石がそこに在るようなものと思っていたのかもしれない。小石のようにあなたがそこ在るのなら、清潔で美しいということなのかもしれない、そう言い聞かせていた部分もあったかもしれないわ。そういうあなたが、光る、光る、光る、と言ったことは、なんだかとても楽しかった。わくわくしたわ。わたしは何か興奮して、目を閉じて、光る、光る、光る、というよりも、光ね、と言ったのよ。光が在ると言ったのよ。あなたはゲラゲラ笑って、愉快そうで、いたずらっ子のような顔でわたしを見るから、からかわれているような気がしたけど、それはどうでもよくて、光が在ったのよ。光が在って、すべてがお化粧しているのよね、きっと。あなたはお化粧じゃなくて、光を見ていたのね。どう思う?あなたのお化粧から、わたしはあなたを判断しようとして、あなたはお化粧をしないから、さっぱりあなたが見えなかったのね。え、それじゃあ、わたしはお化粧を見て誰かを判断する癖がついていたみたいね。わかったわ!あなたが笑っていたのは、こういうことかもしれない。光る、光る、光る、これこそ、お化粧の方も含んでのことね。光る、のがお化粧込みで、光が素顔なのね?わたし自信ないわ。だって、じゃあ、どうしてわたしに光が見えたのかなと思うと、よくわからないから。もしかしたら、光というのは、ある意味、わたしが言う意味では、光ってないのかもね。わたしは、目を閉じて見える光にびっくりしたけど、その光もまたお化粧で、その奥に見えない光があることを感じ取って、それで光が在ると言ったけど、もしかしたら、光る、光る、光る、ということね。光るのは見えない方の、光ってない方の光を指し示すかのようね。ほんと?助けて。光る、という事は、見えない光が在って、それが「光る」ように現れているとわたしは思ったのかな。何だか最近、まったくこういう風よ。一瞬の閃光が走って、何かを掴んだ気になって、次の瞬間には零れ落ちていく。何とも不安定だわ。わたしが不安定なのではなくて、「わたし」と思っているものが固定できないような、常に揺れ動いているところで、その遠くからくる揺れ、その源にこそ、わたしがただひとりでいて、わたしと思ってきたものは、その化粧のような気がしてくるのかしら。どんどん、どんどん、あたまが悪くなっていっているような、かつて価値があると考えていたもの全てが、お化粧だったような、そんな気がしてくるの。すべて、おとぎ話のようなの。王様がいて、家来がいて、獣がいて、商人や魔法使いや戦士や農民、法律や歴史やその他一切、王国が、世界があって、戦争と平和、愛と憎しみがある。紆余曲折を経て、王と姫の華やかな結婚式の日に、突然、全ての建物がドリフターズのコントみたいに剥がれ落ちて、人々は着ぐるみを脱ぎ捨てるの。そうしたら、どう、そこに皮膚も骨も遺伝子もないのよ。ただ、あなたを思わせる大笑いの声が聞こえて、それからわたしは、お化粧全部が剥ぎ取られた宙に、光の一部となって、風なのか、空間なのか、空間の一部なのか、光の一部なのか、それとも一部という見方さえない、ただ全体であり、一部であり、全てにつながっているとは思うけど、一部なのかもしれない、融合しているのか、一部と全体という概念さえない、ただ、光が在ると思った。わたしさえ、光だった。無限と思える、思っているわたしは有限かもしれないけど、そんなことは思いもしない。そういう光が在る。そんな感じ。またあなたは笑っているのかもしれない。いいわ。それでいいのよ。わたしが今こうして言っている事を、誰か他のわたしが、昔のわたしに語りかけてきたら、そこを立ち去っていたでしょうね。意味がわからないから。だって変でしょう?

でも、今のわたしは、笑えないのよ。わたしが長い間お化粧してきて、そのわたし自身もお化粧で、その奥に光が在った、というよりも、奥も何も、光だった。なんて、一体何なの?わたしは本当にどうかしちゃったのかも。別にいいけど。でも、これはわたしだけのことなのかしら。すぐに他の人の感じを気にするのはなんなんでしょうね。まったく、誰とも共有できなかったら、こういう時は、わたしは妄想を持っている、とかそんな風になってしまうのよね。ねえ、あなた何か知らない?ずっと黙っていらっしゃるようですが。別にコタエなんて求めてませんよーだ。けど、どうなのかしらね。不思議だわ、とかそんな風にしておくのが賢いのよね?わかるんだけどね、どうもよくわからなくて、気になっちゃう。例えばさ、頭の中って電気信号みたいなのが走るのよね。脳シナプスの間を光が行き交っている図とか映像とかやってるじゃない?じゃあ、わたしは、わたしがあなたにお手紙している今、この言葉の連なりも、わたしの脳の中を走る光の残像、光の化粧だとでも言うわけ?それってもしかして、あんもくのりょーかい、というやつで、わたしだけが今更驚いている、という訳なの。だとしたら、恥ずかしいわ。でも、恥ずかしいという事も、光のお化粧だとしたら、それも光のダンスなのよね。なんだ、もしかして、わたしこそ遅れてきた者で、皆は、光のダンスを暗黙の了解としていて、わたしがその暗黙をわざわざあなたに書いている、という訳なのね。暗黙を言葉にすること自体が、光と化粧の関係、光とそのダンスとの関係の比喩にもなっていて、それとも逆かしら、化粧の奥に光があることの比喩として、わたしは暗黙の了解という光を言葉というダンスにしていて、人々は既に、その暗黙の了解を、そのまま受け取っている。何だかすごく細い糸をいじくりまわしたような気持ちがする。なんて細いところなの!念仏を思い出すわ。ややこしくて、眠くなってくるし、長いし、わかりにくい。なんかそういうのよね。わたしがこんがらがっているから、きっと、糸の前後とか色々間違ったりしているんだろうけど、それもわたしの中を走った光という意味では、間違いようのない実例として、ここにダンスが成るのよね。鳴るのよね?あなたはにやにやしているかもしれないけど、今度こそは、わたしだって光の信号を示すダンサーよね?ふふふ。まあ冗談よ。本気にしないで。でも、今度おごってよね。もし、わたしが言うようなことは、ナチュラルなことで、誰もが自然、前提としていて、あんもくのりょーかいであり、皆がテレビを楽しんでいる時に、テレビの部品をこねくりまわして、その原理に興味を持っている子供のようなものだと言うのなら、きっとそーねと言うわ。その方が安心よ。安心は、光のダンスにとってイイ所なのよ。そう言わせて。この分はわたしが何かごちそうするわ。ちょっと今、読み返そうと思って、この残像を戻って読みかけたんだけど、どうもだめね、前からすすんで、すすんで、すすんで、後ろを振り返るのって何かだめね。石化しちゃうのかしら。もう振り向かないわ!わたしは、今、クリスマスにいるつもりだからね。メリークリスマス、愛しい人。お祝いだから、こういう風なんだけど、わたしがこうしてペンを動かすのも、立ち上がるのも、あなたとの祝福の時間への意図、そして意図も、みんな光なのよね。みんな光と言わせて。近所のおばあさんがね、毎日毛糸の帽子を被って自転車に乗ってスーパーに行くのよね。よくあいさつするんだけど、わたしに気付いて表情が変化して、自転車のペダルが止まる、わたしを見て「あれ、こんにちは」と言う、そのすべてが光の現われよね。わたしは化粧ばかり見てきたけど、無数の光って言っていいのかわからないけど、光の集合がざわめき、ゆらめいている世界、これがわたしのいる現実なんだわ。おばあちゃんとわたしの挨拶でさえ、無数の光がダンスとなって踊っている。お互いの光が行き交い、感じ合い、交換し合い、ざわめき、揺れて、光る、光る、光るのよね。木も風も火も水も、ケーキも洋服も家も、歌声も星も、みんな光なんだわ。祝福の光は、わたしたちの存在の秘密、真実の姿を体現して、光る、光る、光る。光っていない方の光が、今、みんなの目に見えるように、光る、光る、光るクリスマスツリーで示しているんだわ。わたしの言うところには強引なところがある?でも許して。わたしは、今、わたしが信じることを、それもわたしの光の化粧として現す。そして、あなたはその残像を辿って、その光のダンスを追うことで、あなたの光には、わたしの光の本体が見えて、わたしが書いているこの言葉や意味さえ超えて、宇宙で戯れている。わたしは、これが愛なんだと思う。キスを贈るわ、ダーリン。あなたの光で感じて。今年は化粧の世界で忙しいあなたに会えないことがさびしい。でも、わたしの光の本体を、あなたはこの残像から辿って、あなたの本体で感じるのよ。わたしを目の前にすると、わたしの化粧やナイスボディに目を奪われるあなたも、今日は、わたしの本体を目にして、それを瞳の奥で感じて、わたしの光を受け取って、抱くんだわ。光と光が溶け合って一つになるんだわ。アイラブユー、わたしの本体のチューを送るわ。好きよ。

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