キクチ・ヒサシ

文化と芸術を言祝ぐ『コトバの塔』

意識

わたしのライフテーマ

サヴィカスという男が、キャリア構築理論というものを唱えた。大きな物語を上から与えられて生きることが不可能となった現代において、各々が、自らの物語を創造して、それを拠り所として生きていく。個人の生きる道は、自ら構築していく必要があるのだという意味である。ユングの神話創造への切迫や、河合隼雄が何度も物語の重要性を強調したことも、同様の文脈である。ところで、サヴィカスは、個人のストーリーに一貫して流れているライフテーマが、その個人の心理的力動であるという意味のことを語っている。そして、そのライフテーマを明らかにする為に五つの質問を考え出した。

1 大人になる時、誰を尊敬していたか。

夏目漱石。「こころ」を書いた小説家であり、日本人の意識について書いた男である。

2 定期的に触れる情報(雑誌、テレビ、ネット等)で好きなのは何か。

定期的に東洋思想に触れる。相撲とサッカー日本代表を追っている。日本における個のゆくえ、世界の中の日本という国、総じて日本文化、日本人の意識に関心がある。

3 好きな本や映画は何か、どんな話か。

・「ユング自伝」無意識との関わりの記録である。

・「老子」ことさらな仕業をしない、無為自然な在り方についての哲学書。

・「歎異抄」親鸞に生じた日本人の意識の最深地点の記録。

・黒澤明「用心棒」敵と味方の境界を行き来する個の活躍とそのゆくえ。

・黒澤明「椿三十郎」「雨あがる」無心を身につけた腕のある個がルールを超えた創造を行うが組織には馴染まない。

4 好きな諺やモットーは何か。

・知者不言、言者不知 ・無心 ・円環意識 ・無欲即静虚動直 ・言祝ぎ ・自然法爾

5 最初の思い出は何か、特に三つは何か。

・幼少の頃、叱られて泣いている自分の背後に、全く泣いてもいない自分自身がいるのを感じたこと。

・ボロを着た高僧の物語を好んでいたこと。

・猟師に貰ったうさぎの肉や熊の肉を食べたこと。川魚をとって食べたこと。レモンドロップの缶に妹とおならを溜めて、友達に嗅がせたこと。飼っていた鶏が死んで、神社の裏に埋めたこと。祭りに神輿を担いで町内を周り、皆でジンギスカンを焼いて食べたこと。

五つの質問とわたしの答えは以上になる。わたしの生に、一貫して流れているライフテーマをまとめると、「意識」についての探求が、核となっていることがわかる。個人の意識、日本人の意識に対する関心、意識そのものに対する関心が、一貫して流れているテーマなのだろう。自然との関わり、自然現象への探求心もうかがわれるが、意識もまた自然現象として視ているという点が強いかもしれない。いや、意識がなければ自然も存在せず、すべての自然をあらしめるのは、意識なのだろう。そして、星の運行、太陽の光こそが、意識の元型なのだ。ということは、意識の探求とは、世界観、わたしの神話を創造することとイコールであり、切り離せない。というところだろうか。誰がこのような生を用意するのか、わからないが、わたしの場合は、このようで、このサイト全体を眺めてみれば、まさしくわたしのライフテーマによって建築されていることに気付く。

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