キクチ・ヒサシ

文化と芸術を言祝ぐ『コトバの塔』

ショートストーリー(無料)

「線、言葉、物語」(2007)

2016/07/09

僕は線を描いた。
線を描いた僕は線の中に消えた。
線を描いた僕は消えて、線になっている。
焼肉と書く。
焼肉とさきほど書いた。
頭の中には焼いた肉のイメージはない。
焼肉と書いた、たった今、僕はトマトを頭に思い浮かべている。
焼肉屋に行って、周りの人と同じようなものを注文した。
店員は約束どおり、トマトを持ってきた。
「いくらなんでも!」と僕は言った。
「おもてなしですから」と店員は言った。

(2007)

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