キクチ・ヒサシ

文化と芸術を言祝ぐ『コトバの塔』

女性性と男性性

女性原理と男性原理2「両原理の区別を図式的に把握する段階」

2016/07/09

女性原理と男性原理についての二回目である。前回は、過去の文章をリライトして掲載したが、ここからは新しく書いていく。前回を簡単に振り返ると、人の内面には、内なる異性が存在する、ということを前提に、女性原理と男性原理について、主に芸術創造の面から語った。こうして二つに分けるハタラキが既に男性原理的なのだが、この地点を通らなければ、一元的にモノを視る所までたどり着かぬものであるから、前回時点のわたしが、二律背反的に、両原理を把握したレベルで、まずは表記する。

女性原理と男性原理
受動性と能動性
左と右
無意識と意識
感情と思考
BeingとDoing
つなぐ力と行う力
水と火
花と剣
顔を見る者と顔を見させる者

前回の記事中で、わたしは、女性原理と男性原理を上記のように把握して、比較している。よくわからぬまま読んでくださっているあなたも、この二つの原理の区別を図式的に閲覧することで、ある程度、わたしが言う女性原理と男性原理というものが何であるのか察しがつくものと思う。そして、このような区別が、東洋の陰陽原理に近しいものであることを勘のいい読者は認めたことと想像する。わたしは、ユング分析心理学と河合隼雄の著作に立脚している。そして、ユングが東洋哲学に接近してユング心理学を創始したことは歴史の示すとおりである。

上記の区分けは、お互いに背反する二つの組み合わせである。思考と感情は相反する、火と水は相反する。女性原理と男性原理は相反する。(実際にはひとつであるのだが)わたしたちは、生活する上で、これら二つの原理の平衡を自然に心掛けている。わたしはこの二つの組み合わせを意識した後、しばらくは、これらを切り替えようと心掛けてきたが、切り替えなどではなく、この二つの区分けを超えることが必要だと体験した。その流れは、後で書こうと思う。

まずは、二つに分ける段階で、大事な前提を書いておくこととする。わたしたちは、思考によって、物事を区別し、意識的になる。これを合理意識と呼ぼう。わたしは、女性原理と男性原理を、現代人一般に普遍的に集団意識化されている合理思考によって、分けた、と言える。水と火を分け、女性原理と男性原理を分け、感情と思考を分けているのである。神話でよく描かれる、天と地がわかれる場面を思い起こしてもらうと良いと思う。分けるということは、その組み合わせがお互いに相反するものとして認識することである。その認識のメガネで世界を見、把握するということである。

合理意識に留まる以上、わたしとあなたは分けられ、右と左が分けられ、そこに壁が発生することになる。区別するという「思考」の限界である。合理思考と世界を同一視している限りは、思考の限界によって、自ずから壁が生じ、人間生命にとって不幸な結果が起こる。思考の有用性を認めながらも、それが限定的なものであると認識を深める必要がある。そうでなければ、合理意識は、味方と敵を分け、身内とよそ者を分け、西側と東側を分ける。勝者と敗者を分ける。我々人類が、意識を発展させる過程で、合理思考は必要なものであったが、あくまで過渡期的なものである。この段階に留まる限り、戦争が絶えず、人間関係の争いが絶えることはないだろう。合理意識を身につけることもなかなか大変なことであるから、幼児無意識に留まる道があり、その段階であれば、合理意識の壁について知らぬままに暮らすことが出来る。しかし、合理意識を通過した上で、円環意識に到達することをわたしは望みたい。

この星の構成要素を、男性原理と女性原理に分けることができる。同じように、あなたの心的要素も、男性原理と女性原理に分けることができる。同じように、わたしたちは、なんでも分けることが出来る。強くありたいと思えば、強さと弱さを分けることになる。その人は、表面意識に強さを取ろうとするだろう、するとあなたの全体の中で弱さの方は、深層の方に沈み、それは抑圧される。そのため、あなたは弱いものを見るとイライラし、それを目の前から消そうとする。それは、あなたの心的状態がそのまま外の世界に投影されているのである。強さと弱さの間に壁が出来るのである。あなたが思考によって分けた為である。分けなければ、強いと弱いは存在しない。(わたしの記事でよく出てくる剣という象徴が、思考を意味するのは、切るという機能、物事を分けるということをイメージで現している)

合理思考の限界、その壁について話した。わたしが前回の女性原理と男性原理の記事に書いたように、その時点では、わたしは、相反する組み合わせである男性原理と女性原理を分けた。そうして、男性原理とは何なのかを探索し、それを鍛え、身につける道に入った。(そして、女性原理と男性原理という区別意識を超える所に導かれていった)次回は、そのことについて話そうと思う。

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